Ch. 14 Ep. 10: 栞子の思い
同好会の熱意は認める栞子だが、実施の許可は出してくれない。ただ、期日までに1000人のボランティアを集められたら、スクールアイドルフェスティバル開催を認めてくれるという。絶対に集めてみせる、と約束をしたあなただった。
栞子
スクールアイドルフェスティバル、か……
栞子
まさか、こんな形で関わることになるなんて……
栞子
はい、どうぞ
歩夢
失礼します
栞子
上原さん? どうしました、なにか言い忘れたことでも?
歩夢
うん。栞子ちゃ……栞子さんにね、
おめでとうって言い損ねちゃったから……
栞子
……おめでとう、ですか? 何に対しての?
歩夢
今更だけど、学校説明会、無事終わっておめでとう。
入学希望者もすごい人数が集まったって聞いたよ
栞子
え……はい。手助けしてくれたあなた方には感謝しています
歩夢
それで、あの……さっきの話。スクールアイドルフェスティバル
なんだけど、本当にいいイベントなんだよ?
スクールアイドルの学園祭って言われてて――
栞子
知っています
歩夢
え?
栞子
スクールアイドルフェスティバルこそ……
適性のないことにしがみつき続けた結果なのですから
歩夢
どういうこと?
栞子
あのイベントは、スクールアイドルに挫折をした私の姉が――、
いいえ、そんな話はどうでもいいです
歩夢
どうでもいいって……栞子さんにとって、
なにか深い意味があるんじゃ……
栞子
だから本当にどうでもいいんです。
スクールアイドルフェスティバルがいいイベントかどうかも、
私には興味ありません
歩夢
……そうは見えないよ?
栞子
あなたにどう見えていようと関係ありません。
私のことは放っておいてくれませんか?
歩夢
放ってなんかおけないよ
栞子
なぜです? ありがた迷惑なだけです
歩夢
ありがた迷惑だったとしても、栞子さん、
スクールアイドルフェスティバルのことになると、
なんだか苦しそうなんだもん。放っておけないよ
栞子
私のことにかまけている暇はないと思いますが?
あなたには、同好会の仲間たちとやるべきことがあるでしょう
栞子
期日までにボランティアを1000人集めること。
学園でスクールアイドルフェスティバルを開きたいなら、
この条件は絶対なのですから
栞子
ひとりでも足りなければ、
スクールアイドルフェスティバル自体無くなるのですよ?
歩夢
もちろんわかってるよ
栞子
わかっていません。
私の経験上、個人のボランティア運営というものは、
非常にあやふやな信頼関係の上に成り立っているものです
栞子
1000人集めると決めたからといって、
ポンと集まるものではありませんよ。
限りなく不可能に近いことだと私は思ってます
歩夢
栞子さんの考えはわかった。……だけど私はそうは思わない。
それを証明するためにも、ちゃんと、集めてみせるね
歩夢
スクールアイドルフェスティバルは私たちの……
ニジガクのみんなの夢だから、絶対に叶えてみせる
栞子
……そのみんなの中に私は含まれていません。
私はそんな夢なんか見ない……
歩夢
そっか……だけど、スクールアイドルのことは好きなんだよね?
栞子
別に好きなわけじゃありません……
歩夢
嘘
栞子
なぜ私が嘘をつく必要があるんです?
歩夢
だって嫌いな人が、あんなに真剣に練習できるわけないもん
栞子
それは、そういう取引だったからです。そうでなければ誰が……
歩夢
それなら、今はそういうことにしておくね
栞子
……これから先も、私の主張が変わることはありません
歩夢
栞子ちゃ……栞子さんの主張がどうでも、
私は栞子さんが優しい人だってわかってるから
栞子
突然何を言い出すのですか?
意味がわかりません
歩夢
だって、教えてくれたんでしょ? イベントをするんだったら
1000人って必要な人数なんだよね? それをわかってて
集めるように言ってくれたんだよね?
栞子
……違います。そういうわけじゃありません!
歩夢
うん。じゃあ、そういうことにしておく。
でも、楽しみにしててね。必ず1000人、集めてみせるから
栞子
まったく……上原さんは、見かけによらず結構頑固なんですね
歩夢
えへへ、それは栞子ちゃ……さんも一緒でしょ?
栞子
ひとつ言っておきましょう。
私は、誰になんと呼ばれようが気にしません
栞子
しお子、しおってぃー、鬼の生徒会長、
冷血漢、いろいろな名で呼ばれています。
ですので、あなたもお好きに呼べばいいのでは?
歩夢
ご、ごめん……、気になった……?
栞子
そうですね。会話に集中できないので、
呼びやすい名で呼んでくださっていいですよ
歩夢
ふふっ、じゃあそうする! またね、栞子ちゃん!
栞子
……ふう
栞子
……スクールアイドルに夢中になっている人って、
なぜ皆あんな感じなのでしょう……
訳がわかりません
栞子
だけど、本当に理解できないのは私自身ですね……
栞子
私はあのイベントをなくしたいはず。
勝手に復活させられるくらいなら、
私の手できちんと終わらせてあげたい……
栞子
なのに、なぜあんな条件を提示してしまったのか……
栞子
……私は一体、どうしたいの……?
栞子
スクールアイドルフェスティバルを……
栞子
姉さんの、残したものを……
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