歩夢ちゃーん……って、
あれ？　いない。
この辺りで待ってるって言ってたはずなのに……

あ、スマホにメッセージが来てる。
「道をきかれたので案内してきます」
……それなら仕方ないね。待っていよう

[Fade in/out.]

はあっ、はあっ……
お～い！

歩夢ちゃん！

ご、ごめん、待たせちゃって……！

いや、先に待たせてたのは私のほうだから……。
それにしても、ずいぶん時間が掛かったね、道案内。
そんなに遠くだったの？

ううん、そんなことはなかったんだけど……
ここに戻る途中、おばあさんの荷物運びを手伝ったり、
子供が飛ばしちゃった風船を取ってあげたり

落とし物を捜すのを手伝ったり……
それと、迷子の女の子がいたから交番に連れて行ったんだけど、
一緒にいて、って泣かれちゃって

あはは……
それは大変だったね……

でも、すぐにお母さんが迎えに来てくれて、
その子も泣き止んだよ。お姉ちゃんも連れて帰る、って
言われた時はびっくりしたけど

ええっ！？

あ、そうそう！
荷物運びを手伝ったお礼にお菓子をもらったの！
あとで一緒に食べよう

風船の子からは、可愛いシールをもらっちゃった。
風船を取ってくれたお礼だって

落とし物をした人はね、
スクールアイドルの私のことを知ってたみたいで、
これからも応援してます、って言ってくれたんだ

へえ……

……どうしたの？　なんかご機嫌斜めだね。
あっ、やっぱり待たせちゃったの怒ってる？
ごめん、本当にごめんね！

いや、それは怒ってないよ！
ただ、歩夢ちゃん大人気だな～、って思ってさ……。
今日だけで何人ファンが増えたんだろう

人気なんかじゃないよ。
声掛けたのだって全部私からだし

そうかなぁ……。
歩夢ちゃんに優しくしてもらうと、
みんな好きになっちゃうよ

歩夢ちゃんが大勢に好かれるのは私も嬉しいけど……
なんか、ちょっと寂しいなー、なんて……

……ふふふっ♪

ううっ……そうだよ、やきもちだよ！
今日は私とお出かけしてるんだから、
私と一緒にいてください！

あははっ♪　はーい、ずっと一緒にいるね♪
さぁ、このあとごはん食べる予定だったよね。
どこに行く？

美味しそうなカフェを見つけたからそこに行きたいな。
ちょっと待って、今お店の情報出すから。
えーっと……

……少しは私の気持ちも分かってくれた、かな？

優しくてみんなに好かれるのは、
私よりも誰かさんのほうなんだからね