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Ch. 29 Ep. 2: 不思議なあの子

栞子たちとのライブから数日後、ランジュはひとり物思いにふけっていた。ライブのあと、真っ先に自分に抱きついて来たあなたのことがわからない。意地悪なことも言ったのに、なぜその笑顔は変わらないの?

ランジュ

はぁ~……完璧なランジュをもってしても、
この世はわからないことだらけね

ランジュ

お友達って関係もだけど……あの子よ。
あの子って本当に不思議

ランジュ

ランジュがあの子に言ったの、たぶんいじわるなことだったわ。
なのに、あの子の態度は変わらなくて……

歩夢

あれ? ランジュさん?

ランジュ

歩夢! どうしたの? ひとり?

歩夢

うん、飲み物を買いに来たの。
ランジュさんこそひとり?

ランジュ

ええ、ちょっと考えたいことがあって……

ランジュ

そうだ! ねえ、歩夢。今、時間ある?
あの子の話を聞かせてくれない?
ランジュ、知りたいのよ!

歩夢

あの子って……

ランジュ

アナタたちの部長のこと。
すごく不思議な子だと思って

歩夢

あはは、別に不思議じゃないよ

ランジュ

そうなの? でも、ランジュはたぶん、
あの子にいじわるなことを言っちゃったのよ。
それなのに忘れてるみたいで……

ランジュ

この前のライブだって、
一番に駆け寄って、ハグして褒めてくれて……

歩夢

ふふ。いい子でしょ?

歩夢

あの子はね、スクールアイドルが大好きなんだ

歩夢

だから、ランジュさんのパフォーマンスを見たら、
それで胸がいっぱいになって忘れちゃうのかも……

歩夢

あの子はずっとランジュさんのこと褒めてたもん。
いじわるだなんて思ってないんじゃないかなあ。
私、あの子からそんな話全然聞いてないよ

ランジュ

……やっぱり不思議な子じゃない

歩夢

うーん……
不思議な魅力がある、っていう意味ならそうだね

ランジュ

あの子はランジュの知らない「特別」ってことなの?

歩夢

私にとっては……
すごく、すごく特別な存在だよ

歩夢

今の私があるのは、あの子のおかげだから……

ランジュ

え?

歩夢

スクールアイドルをやろう、って誘ってくれたの、あの子なの

歩夢

いろんな相談に乗ってくれて、すてきな曲も作ってくれて……

歩夢

特別だと思ってるのは私だけじゃないと思う。
同好会のみんなにとって、かけがえのない存在なんだ

ランジュ

……よくわからないわ。
作曲担当だから特別ってこと?

歩夢

ううん、そういうことじゃないよ。もし曲が作れなくても、
あの子は私たちにとって大切な人だよ

ランジュ

なにもできなくても特別なの?

歩夢

ううん、充分してもらってるの

歩夢

ねえ、ランジュさんは、スクールアイドルフェスティバルを観て、私たちのこと好きになってくれたんだよね?

ランジュ

そうよ! すごかったわ、あのイベント!
歩夢たちのステージ!

歩夢

ありがと。
でもね、スクールアイドルフェスティバルで
一番すごかったのはきっとあの子だよ

ランジュ

あの子が?

歩夢

うん。あのイベントはね、一度は中止が決まってたの

歩夢

それを、諦めたくない、やりたい、って言って、
みんなを巻き込んで本当に実現させちゃった

歩夢

実現するまでは大変だったの。
決めることもやることも多いし、
私たちだけの力じゃ無理なこともあって……

歩夢

諦めそうになることもあった。
実際、私は一度、いろいろあって逃げちゃったんだ

歩夢

そんなときも、あの子は絶対諦めなかった

歩夢

私のことも引き戻してくれた。
私はやっぱりスクールアイドルが好きで、
あの子とスクールアイドルがやりたいって思ったの

歩夢

いつだって私たちのことを一番近くで応援してくれて、
どんな時だって私たちの味方でいてくれる

歩夢

あの子がいてくれるから……力をくれるから、
私たちはスクールアイドルでいられるの。
ステージで頑張れるの

ランジュ

いてくれるから……力をくれるから……

ランジュ

……応援から力をもらうの?

歩夢

あ、これは私が勝手に思ってるだけだから……

歩夢

その、変な話になっちゃってごめんね……

ランジュ

ううん、いいの。
今の話、ランジュには少し難しかったけど、
あの子のことを知る材料は少しでも欲しいのよ

ランジュ

だって、みんなとちゃんとお友達になりたいから

ランジュ

栞子たちと約束したの。
たくさん話もケンカもしましょう、って

歩夢

ふふっ、栞子ちゃんたち、
ランジュさんが帰ることになったときはすごかったんだよ

ランジュ

うっ……。
すごく……怒ってた?

歩夢

そうだね……
怒ってたけど、きっとそれよりは
寂しいって気持ちのほうが大きかったと思う

ランジュ

……やっぱり、ランジュはすごく悪いことをしたのね。
反省だわ

歩夢

落ち込むことないよ。私とあの子もすごいケンカしたけど、
仲直りしたらもっと仲良くなれたもん

ランジュ

あの子と歩夢、とてもいい関係なのね……

ランジュ

……

ランジュ

こんな風に悩んでるのは、ランジュらしくないわね。
決めた! ランジュ、あの子と話すわ!


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