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Ch. 17 Ep. 8: 過去との再会

スクールアイドルへの愛を存分に語り合った、スクールアイドルプレゼン大会。順調にイベントが進行する中、裏方として動く栞子のもとにせつ菜がやって来て……。

栞子

なるほど、そんなことが……。
ありがとうございます、優木さん。
私のほうで対応できると思います

せつ菜

さすがにこれだけの人が集まると、問題が後を絶ちませんね

栞子

ええ。でも、ボランティアの方々が
しっかりと働いてくれているから、
この程度で収まっているのでしょう

せつ菜

ふふ、その通りですね

栞子

しかし、あなたまで私に付き合って
裏方の仕事をしなくてもいいのですよ?

せつ菜

あはは……なんだか、じっとしていられなくて

栞子

ステージもこなしてきているのです。
疲れているのではないですか?
もう大丈夫ですから、出番まで休んでいてください

せつ菜

それが、疲れとかは全然ないんですよ。
むしろ、自分でもなんで?って思うくらい、
力が湧いてくるんです!

せつ菜

それに、ここまで頑張ってきたことの成果を
この目で確かめたいんです……
それでも、ご迷惑でしょうか?

栞子

迷惑だなんてとんでもない!
私としては、優木さんが前生徒会長の
目線からしてくれるアドバイスに助けられています

栞子

そういうことなら、ぜひ見回りに付き合ってほしいです

せつ菜

ふふ、ありがとうございます! ぜひ!

[Fade in/out.]

せつ菜

栞子さんから見て、
スクールアイドルフェスティバルはどう映っていますか?

栞子

とても素晴らしいと思います。
すれ違う人がみんな楽しそうにしていますから

栞子

それに虹ヶ咲の生徒が中心になって、
ボランティアも上手く機能しています

栞子

今なにをして、この後なにを優先すべきか、生徒達が考え、
選択し、率先して行動している

せつ菜

でも、どの生徒もとっても楽しそうに見えますよね

栞子

ええ。このイベントは、
虹ヶ咲学園としても最高の学園祭になっているということです

栞子

学園全体で積極的にイベントを盛り上げ、
楽しそうにしている姿を目にするのは嬉しいものです

栞子

正直、ここまで上手く行くとは思いませんでした。
人の熱意というものを、
私は過小評価していたと反省しています

せつ菜

私、栞子さんの熱意もかなりのものだと思うんですけど……

栞子

え? 私、ですか?

せつ菜

はい。そうでなければ、いくら約束をしたから、
生徒会長だからといって、
ここまで力を尽くしてくれないと思います

せつ菜

やっぱり、栞子さんは凄いです!

栞子

な、なんなんですか、唐突に?

せつ菜

私、栞子さんが私に生徒会長をやめろって
言ってくれたことに感謝しているんです

せつ菜

あなたには、
私の大好きの在り処を見透かされていました……

せつ菜

学園のためはもちろん、
私のためを思って言ってくれたことですよね

せつ菜

栞子さんは、自分以外の人の幸せについて、
これほど真剣に考えられる情熱を持った方なんです

せつ菜

そんなあなたなら、
みんなを良い方向に導いてくれるに違いありません!

栞子

あ……

栞子

ありがたい言葉ですし、
そうあるように努めているつもりではありますが、
過大評価、ですよ……

せつ菜

そんなことないです!

栞子

今更、私がこんなことを言うのは問題が
あるのかもしれないですけど、優木さんがあのまま生徒会長を
していても、この学園は素晴らしい場所であったと思います

栞子

あなたが提案したアプリを作ったおかげで、
今回の運営もスムーズに行えていますから。
この発想は私にはないものでした

せつ菜

えへへ、ありがとうございます。
それでも、やっぱり私より栞子さんの方が相応しいです

栞子

優木さん、あなたに言ってもらえると本当に嬉しいです。
跡を継いだ者として、
ご期待に背くことのないよう頑張ります

せつ菜

はい! あ、でも、これからもなにかあったら、
私たちにお手伝いさせてくださいね!
私たちも、栞子さんにはお願いしちゃいますから!

栞子

……ふふっ、抜け目がないんですね、優木さん

せつ菜&栞子

ふふふふっ

栞子

あ、優木さん、
そろそろ次のステージの時間がせまってきているのでは?

せつ菜

わ、本当だ! ありがとうございます、
栞子さん。私、頑張ってきますね!

栞子

はい。私も応援にいきます

[Fade in/out.]

薫子

あ、いたいた。やっと見つけた。久しぶりね、栞子

栞子

……っ

薫子

なあに? 実の姉の顔を忘れたなんて言わないわよね?

栞子

……姉さん、どうしてここに?

薫子

そりゃ、過去に関わっていた者として、
後輩たちが引き継いでくれたものがどんなのか、見たいじゃん?

薫子

それに、昨日ちゃんとメールしたでしょ?
会いに行くって。返事もくれないんだもん。
お姉ちゃん寂しかったなー

薫子

それにしても、あんたがスクールアイドルフェスティバルの
運営の手伝いをするなんてね。スクールアイドル、
嫌いなんじゃなかったっけ?

栞子

……そうですね。嫌いでした。とても

薫子

そうよね。「スクールアイドルは無駄の象徴」だっけ?

栞子

それは……

薫子

どんなふうに考えてるか当ててあげよっか?
適性に見合う生き方をしていれば安泰な三船の跡取りだった私が、
何もかも失ったのは……

栞子

スクールアイドルに……スクールアイドルフェスティバルに、
入れ込みすぎたから……

薫子

うん。あんたはずっと、そう思ってたんだよね?

栞子

思っていました

栞子

そして、そんな風に失敗してしまう人を、
もう見たくなかった

栞子

そのために、生徒会長として、
生徒のみなさんの適性を、なにより大事にしてきました。
みんなの笑顔が見たかったんです……

薫子

うん、そうだね

栞子

でも、姉さんは失敗なんかしてなかった。そう決めつけていたのは私なんです。今さらですが、姉さんの言っていたことは――

薫子

言いたいことはわかるよ、栞子。この、学園全体を巻き込んだ
スクールアイドルフェスティバルを見れば、ね

薫子

あんたの考えを動かす、
とびきりすてきなことがあった、ってことだ

栞子

ええ。私のやり方では、こんなにたくさんの人たちを
笑顔にすることはできませんでした

栞子

それができるスクールアイドルのことは、
素直に凄いと思っています

栞子

それがわかったことは……嬉しいです。
そして、今の私は、スクールアイドルが好きで、
応援するひとりです

薫子

応援するひとり? ふふ、そういうところは相変わらず昔のままね

栞子

昔のまま……?

薫子

スクールアイドルが持つ魅力に惹かれてるのに、
自分でやりたいとは思わなかったの?

栞子

それは……。私は裏方に徹するほうが適性に合ってますし、
立派にこなせる自信があります

栞子

それに、私は歌もダンスも上手くない……
だから、私には向いていないと思うので……

薫子

そのなんでも理屈におさめちゃう癖のことを
昔のままって言ったのよ

薫子

理屈で考えることが悪いとは言わないよ。
でもたまに、そのせいで肝心なものが見えなくなるんだよね

薫子

歌やダンスが上手いことだけがスクールアイドルの魅力?

薫子

そんなものより胸にくるものがあったから、
あんたの心は動いたんじゃないの?
あんたの中に芽生えた「気持ち」はないの?

栞子

芽生えた……気持ち?

薫子

確かにあんたが裏方にいれば、みんなは安心すると思う。
あんただってそのことに満足できると思う

薫子

でも、栞子。もっとあんた自身がワクワクできる選択だって、
あるんじゃない?

栞子

……姉さんは、私に「スクールアイドルになりたい」と
言わせたいのでしょうが、やっぱり私には足りていないものが
多すぎると思います

薫子

足りてない? 歌唱力とかダンスのセンスとかの話?

栞子

いえ、その、なんと言いますか……
みなさんスクールアイドルにとても真剣に取り組んでいるんです

栞子

好きという気持ちだけではなく……
信念のようなものを感じるんです……

薫子

あははっ! あんたってばもう、ほんとに真面目!
けど、いい言葉だねぇ。スクールアイドルの信念か……

薫子

確かにスクールアイドルは……、μ'sも、Aqoursも、
それにニジガクの子たちも、
あんたの言う信念ってのを持ってると思うよ

薫子

んで、あんたも同じものを持っていると、私は思うんだけどね

栞子

私がですか!? そんな……

薫子

私はさ、スクールアイドルに対する愛だけは
誰にも負けないって自信があるんだ。
だから、自分と同じ気持ちでいる人のことは、すぐわかる

薫子

そんな私からすると、「スクールアイドルには信念がある」なんて言えちゃう人が、憧れだけでおさまるとは思えない

薫子

裏方も悪くないけど……
スクールアイドルでなきゃ得られないものが、
必ずあって、あんたはそれを欲してる……

薫子

と、おねーちゃんは思うわけよ

薫子

ま、もう少しだけ悩めばいい。
あんたがスクールアイドルから学んだことを、思い出しながらさ


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