story:event:itex-23:episode-6:ja

学校祭でおもてなし Ep. 6

ダイヤ

はぁ……っはぁ……っ少し、休憩させてください……

しずく

大丈夫ですか? はい、お水です

ダイヤ

……いただきますわ……ん……っ

しずく

ダイヤさん、とても筋がいいです。
あれだけの台詞を一度に覚えてしまうなんて

ダイヤ

しずくさんの教え方がお上手だからですわ。
やはり、演劇を追及している方の言葉には重みがありますわね

しずく

えっ! そ、そうですか?
そう言ってもらえると、嬉しいです

ダイヤ

もうあまり時間がないですけれど……
最後に、1つだけ教えてください

しずく

はい、なんでしょうか

ダイヤ

わたくし、人魚姫の気持ちがわからないのです。
言いたいことも言えずに泡になってしまったのは
どうしてなのでしょうか

ダイヤ

自分とは違いすぎる役柄を演じる時、
どうしたら台詞に感情を込めることができるのですか?

しずく

そうですね……
演じる役と自分の違いをとことん楽しんでみるのはどうでしょうか

ダイヤ

違いを、楽しむ……?

しずく

はい!
無理になりきろうとしても絶対に違和感が出ると思うんです

しずく

ですので、どうしてこの子はこんなことを言うんだろう?
って想像をして、ダイヤさん自身が楽しむんです

ダイヤ

楽しむ、ですか……。うふふっ、わかりました。
では、精いっぱい楽しんできますわ

しずく

はい、ぜひ!

しずく

あ! 大変、そろそろ衣装に着替えて
スタンバイしないといけませんね

しずく

舞台袖から私が台詞の入りや立ち位置を指示します。
私がずっとダイヤさんのそばにいますので、ご安心ください

しずく

緊張したら深呼吸です!

ダイヤ

ありがとうございます、しずくさん。
さあ、気合を入れて参りますわよ!

[Fade in/out.]

ダイヤ

「わたくしが……あの日、あの金色に煌めく夕暮れ時、
 打ち寄せる波をかき分けてあなたの命を抱きしめた娘なのです」

ダイヤ

「どうして気付いてくださらないの?」

ダイヤ

「わたくしは、あなたの隣にいるだけで……
 それだけで、幸せでしたのに」

しずく

次で、ラスト……!
頑張ってください、ダイヤさん!

ダイヤ

「嗚呼、今この時、わたくしの体は
 煌めく海の一粒の泡へと変わってしまいます」

ダイヤ

「いつか、きっといつか、
 たゆたう海を見たときに思い出してくださいませ。
 さようなら、わたくしの王子様……」

[Fade in/out.]

ダイヤ

お、終わりましたの……?

しずく

素晴らしいです、ダイヤさんっ!!

ダイヤ

ちょ、ちょっと! 急に抱き着かないでください!

しずく

すみません! でも、本当に素敵でした。
ダイヤさんが本当に泡になって消えてしまうのではないかと
思うと、涙が出てしまって……

ダイヤ

わたくしは消えたりなんかしませんわよ。ほら、涙を拭いて。
梨子さんと真姫さんを呼んで、カーテンコールに応えなくては

しずく

はいっ!


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