少しは落ち着いた？

はい……

急にいなくなるから、
同好会のみんなも演劇部のみんなも心配してたよ

すみません。
どうしてもみんなに合わせる顔がなくて

……しずくちゃんは、部長さんが一人芝居をやめたのは
自分のせいだ、って思ってるんだね

思っている……のではなく、
それが事実です

でも、前聞いたしずくちゃんの話だと、部長さんて
そんな簡単にお芝居をやめるような人じゃないと思う

それは……そうですが、
今回は違ったのかもしれませんし……

だからね、私、
部長さんに話を聞いてきたんだ

ええっ！？

……部長、どんな感じでしたか？

笑ってた。
あのフライヤーはしずくの考えだったんだ、って

あのお芝居が人に見せるものじゃないって言ってたのは、
自問自答のためにやってたことだからみたいだよ

自問自答？

うん。部長さん、
いろんな劇団からスカウトがきてる、って言ってたでしょ？
自分がそこでやっていけるのか、悩んでたんだって

部長さんが言うには
「今まで自分の好きなように演じて、
　それが不思議と評価されてきた」

「評価されるのはうれしいけど、気ままにやってきた自分が
　劇団という場所でうまくやっていけるのかわからなかった。
　だから芝居の中で考えてみた」って

……部長は、悩んでいたんですか？
それで自問自答の一人芝居をしていたということですか？

そうみたいだね

「自分は誰かのために演じることができるのか？
　誰かのために演じたいという自分は、自分のなかにいるのか？」
を探ってた、って言ってた

そういうことを考え出したのは、
しずくちゃんのステージを見たからなんだって

ええ！？　私の！？

しずくちゃんは、「自分の好きなように演じる」ことと
「人を楽しませるために演じる」ことを自然と両立させてる

それって「自分のため」が「人のため」でもあるから、
本当にすごいことなんだよ

しずくちゃんのこと心から尊敬してる、って言ってた

そんな……。私だって、部長のことずっと尊敬してます！
ニジガクに来て部長のお芝居を見て、
どんなに胸を打たれたか……！

先輩、ありがとうございました！