あれ、せつ菜ちゃんと梨子ちゃん？

こんな所で会うなんて奇遇ですね。
よかったらご一緒しませんか？

いいの？　だけどなんだか珍しい組み合わせだね

そ、そう？

ふふふ……
実は、梨子さんとは、似たような趣味を持つ同志なんですよ

似たような趣味って？

そ、それより、あなたも買い物に？

え？　うん、次のライブで使いたい備品とかを買いにね。
すごくいいものが買えたんだ〜。ふたりは？

え～と……本……を、買いに……

本を買いに池袋まで？

ええ、近所の書店では取り扱っていない特別な本なんです。
ここには専門店があるので

なんだか難しそうな話……。
なんの専門書なのか聞いてもいい？　私でもわかるかな？

はい、薄い――

わー、わー！

どうしたんです？

どうしたんです？　じゃなくて、
こういう公な場所で、そういう話はちょっと……

あれ、もしかしてまずいこと聞いちゃった？

あ、ううん、そういうわけじゃないんだけど、
あまり大きな声で話せることでもないというか……

はぁ～、大好きなことを照れずに熱く語れる
せつ菜ちゃんが羨ましい……

私だって、少し前まではこんな風じゃありませんでしたよ。
両親にすら本当のことを言えませんでしたし……

でも、大好きって気持ちは恥ずかしいものじゃなくて、
やっぱり素晴らしいものなんです。
だから、私は自分の気持ちに正直でいようって決めたんです！

よくわからないけど――

好きって気持ちは
恥ずかしいものじゃないっていうのもわかるから、
私も少しずつ変わっていきたいな

大好きな専門書のこと、やっぱり聞きたい。
薄いなんとかってなに？

それはですね

ストップ!
好きだって気持ちは大切だけどやっぱり場所は考えて！
だから、思いっきり語れる場所に行きましょう、カラオケとか！

わあ、いいですね！
あなたは時間、大丈夫ですか？

うん、買い物も終わったところだし大丈夫。
ふたりの話、聞かせてほしいな

個室が確保されたのなら、リミッターは解除！
こうなったら、とことん語らせてもらいますから！