（エマさんがいつも歌いに行ってる秋葉原の路上ステージって、
　こんな場所にあるんだ……。人通りは多いけど……）

はい、エマさん。喉にいいドリンクだよ。
少し休もう

ありがとう〜。わたし、あなたが作ってくれる
このドリンク大好きなんだ♪
ちょっと休憩したら、また頑張るね！

ねえ……場所、変えようか？

あ、ここじゃあんまり聞いてもらえてないこと気にしてる？
ふふ、スイスにいたころと比べれば、
これでも十分聞いてもらえてるほうなんだよ

でも……。
あー、エマさんの歌、もっとたくさん作っておけばよかった！
レパートリーがないから童謡ばかりになっちゃうよね……

え？　童謡は好きだから歌ってるだけなんだけど……。
それに、歌がどうとかってことじゃないと思うんだ

どんな歌でも、人を惹きつける力はあるよ。
歌の力を引き出せてないわたしが未熟なの

もちろん、もっとたくさんの人に聴いてもらえたらいいなって
思うけど、焦っても仕方ないもの。
歩夢ちゃんじゃないけど、一歩一歩だね

でも、これじゃあ、次に行ったときも
あの子を振り向かせることはできないかな〜

ううん、でも、行くたびにちょっとずつ
近づいてきてくれてはいるもの。
あの子のためにも、もっともっと頑張らないとね♪

（エマさん……）

ねえ、わたしの歌が誰かの心に届くって信じて、見てて

[Fade in/out.]

（エマさんの歌声……すごく優しくて、あったかい。
　でもやっぱり歌っているのが童謡だと
　立ち止まってくれないんだな……）

（よし、やっぱり私が呼び込みをしなくちゃ……
　待っててね、エマさ……あれ？）

（あの男の子だ……。エマさんと一緒に歌ってる！　なんで！？）

きみ、どうして、ここにいるの？

いつものうるさいうたがきこえたからきた……

でも、ひとりでうたってて……なんかいやだった。
ひとりでうたうな

そう、だったんだ。……嬉しいよ。
おねえちゃん、きみがきてくれてすごくすごく嬉しい！

ねえ、おねえちゃんも一人はさみしいから、
きみも一緒に歌ってくれないかな？

べつにいいけど……そこのおまえもうたうんだぞ。
にちようびは、いっつもみんなでうたってた

えっ！　私？　でも、これはライブだから……

すごくいい考え！　ねえ、みんなで歌おうよ！
わたし、あなたとも一緒に歌いたいな

ほら、はやく！

ああもう、そんな風に言われたら断れないよ。
二人より下手でも許してね！

じゃあ、ドレミの歌を歌うよー！

（三人で歌い始めたドレミの歌は、立ち止まっていた
　沢山の人たちも合わせての大合唱になった。
　エマさんは、ちゃんと歌の力を引き出せてるよ……！）